都賀川水難事故
震災が起きてから毎年わたしたちは都賀川公園で灘チャレンジを開催してきました。しかしその都賀川にも様々な災害の危険が潜んでいます。最近では2008年の都賀川水難事故が大きな話題となりました。
目次
○事故の基本知識
○被害拡大の要因
○事故の教訓
○事故後の整備
○事故の基本知識
どこで・・神戸灘区の都賀川
いつ・・・2008年7月28日の午後
被害・・・死者5名(うち子ども3名)、救助された人11名、自力避難者が41名
概要・・・当時100年に1度の大雨とも言われる雨量のゲリラ豪雨が発生したことで起きた濁流により、逃げ遅れた多くの人の命が危険にさらされた
○被害拡大の要因
今回こんなにも多くの人が逃げ遅れてしまったのは水位の上昇が異常に早かったことが大きな原因です。
ゲリラ豪雨が発生したとき、都賀川甲橋では、降雨とほぼ同時の14:40~50のたった10分間で1.34mも水位が上昇しました。大雨が降り始めてからわずか5分程度で遊歩道の高さまで水位が上昇しました。その結果、多くの人が近くの階段にすらたどり着けず河川に取り残されてしまったのです。
〈当時の状況〉
13:20 大雨・洪水注意報 発表
13:55 大雨・洪水警報 発表
14:20 暗くなる
14:36 雨が降り始め地面がぬれる
14:40 前が見えにくいほどの雨
14:42 遊歩道まで水位が到達し濁流が流れる
14:44 水位がおよそ1mを超える
14:50 最高水位に到達
当時、2名の引率と児童16名で川遊びにきていた学童保育所の行動を例に紹介します。
彼らは14時半頃、雲行きが怪しくなったため帰り支度を始めていましたが、雷が鳴り出したため橋の下に避難しました。しかし約10分間で猛烈な雨となったため、上にあがろうと70m上流の階段へ向かいました。階段にたどり着き、引率者が児童を階段に押し上げていましたが瞬く間に水位が上昇したため間に合わず、引率者1名と児童2名が流され、そのうち自力で這い上がった引率者を除いて児童2名が亡くなりました。
当時現地にいた人の証言では、「津波のような水が押し寄せてきた。」、「自分の背丈よりも高い濁流が押し寄せていた。」、「増水は想像を超える速さだった。」などと語られており、いかに急速な水位上昇だったかがわかります。
○事故の教訓
この都賀川水難事故はまれな災害のように見えますが、「2.水害×神戸」でも述べたように都賀川を含む六甲山系は他の川に比べて水害が起きやすい構造をしています。
川で遊ぶときは上流の天気に気をつけたり、雨が降ったら川に近づかないとかはよく言われることですが、都賀川では特に注意が必要です。
・雨が降ったら雨宿りするのではなくすぐに階段を上って避難する
・雨が降り始めてからではなく注意報や警報の時点で川に近づかない
この2点は今回の水害から学ぶべき事柄です。今回の水害も、雨が降り出してからの時間は非常に短かったですが、事前に大雨注意報や警報はでており、その段階で避難することができていたら確実に命を失わずに済んだはずです。常に頭の中に教訓として入れておきましょう。
○事故後の整備
今回の水害の事後調査では、事前に警報や注意報が出ていたのにも関わらず、それを知らせることができていなかったということが問題視されました。そこで、都賀川水難事故をきっかけにして都賀川をはじめとする神戸の河川には水難事故防止設備が整備されました。
兵庫県では大雨注意報等発表時に黄色の回転灯が点灯する増水警報システムや、それと連動した電光掲示板、また、注意喚起看板や横断幕の設置を行い、危険性の周知をより強化しました。都賀川では現在14カ所に増水警報システム、86カ所の注意喚起看板が設置されています。
参考ページ
・神戸・都賀川水難事故12年「災害から子どもを守るために」パネル展開催 | ラジトピ ラジオ関西トピックス (jocr.jp)
・2008都賀川ゲリラ豪雨における河道内流況と流量の推定 (kyoto-u.ac.jp)
・神戸市:4.近年に神戸市で起きた水害 (kobe.lg.jp)